カズデンタルブログ

インプラントは入れてからもお手入れが必要|「インプラント周囲炎」という落とし穴

一デンタルパーク院長の武内です。

お盆が明けて、少し暑さがやわらいできましたね。夏の疲れが出やすい時期でもあります。
ご自愛くださいね!

さて今日は、インプラントの話をします。ただ「インプラントを入れる」という話ではなく、入れたあとの話をします

診療室でこう言われることがあるんですよ。

「インプラントにしたから、もう虫歯の心配はないですよね」

半分は正解です。
人工物ですから、確かにインプラントが虫歯になることはありません。

でも、もう半分が抜けているんですね。今日はそこをお伝えしたいと思います。

歯科衛生士がインプラントを入れた患者のメインテナンスを行う様子(インプラント周囲炎を解説する川越の一デンタルパークのイメージ)

インプラントには「歯根膜」がありません

まず、天然の歯とインプラントの構造の違いについて

日本歯科医師会のテーマパーク8020によると、天然歯の歯根の周りには歯根膜という組織があります。
これはクッションの役割を果たすと同時に、噛んだときの圧力を感知するセンサーにもなっています。

一方、インプラントは骨と直接くっついた状態です。
このクッションもセンサーもありません

そしてもうひとつ、大事な違いがあります。

天然歯では、歯ぐきが歯の表面にしっかり付着していて、細菌が容易に侵入できない構造になっています。
ところがインプラントには、そのような構造がありません。同資料には、細菌は容易にインプラントと粘膜の間に侵入すると明記されています。

だから、歯ブラシによる清掃がとても重要になるんですね。

「インプラント周囲炎」という病気があります

ここが本題です。

インプラントの周りには、歯周病とよく似た症状を示す「インプラント周囲炎」が起こることがあります。

インプラントはインプラント周囲炎にかかりやすいといわれており、いずれも歯周病菌が関与しているため、歯周病の治療をしないままインプラント治療を行うと、インプラント周囲炎を起こしやすくなると。

つまり、こういうことなんです。

  • インプラント自体は虫歯にならない
  • でも、それを支えている骨と歯ぐきは病気になる
  • そして原因菌は、歯周病と同じ

支えている土台がやられてしまえば、いくら人工の歯が丈夫でも意味がありません。ここが「入れて終わりではない」といういちばんの理由です。

歯周病そのものについてはむし歯・歯周病治療のページもご覧ください。

メインテナンスの有無で、これだけ変わります

数字を見ていただくのがいちばん早いと思います。

厚生労働省のe-ヘルスネットにも、歯周治療とメインテナンスに関するBeckerらの研究が紹介されています。5年間で1人あたり何本の歯を失ったかというデータです。

状況 5年間の喪失歯数
歯周治療を行わなかった 1.8本
歯周治療は行ったが、メインテナンスなし 1.1本
歯周治療を行い、メインテナンスも継続 0.5本

同資料でも「調査対象や時期が異なるため単純には比較できない」と断ったうえで、メインテナンスは歯の保存に重要であるとまとめられています。

これは天然歯についてのデータですが、原因菌が同じである以上、インプラントでも考え方は変わりません。
むしろ、細菌が入りやすい構造であることを思えば、より大事だと私は受け止めています。

e-ヘルスネットには、印象的な一文もあります。「歯周治療の終了は次のメインテナンスのスタートでもある」。インプラントもまったく同じです。

どのくらいの間隔で通えばいいのか

具体的な目安も示されています。

テーマパーク8020では、インプラントの上部構造を装着したあとのメインテナンスについて、装着後1カ月、3カ月、6カ月、1年と、1年以内は細かく行い、1年以降は特に問題がなければ年1回とされています。

そして、その中身は掃除だけではありません。

  • 専用の歯ブラシなどを使った清掃(歯科衛生士の指導のもとで)
  • 噛み合わせのチェック
  • エックス線撮影による、インプラント体の周りの骨の状態の確認

この「骨の状態を見る」というのが、実は重要になってきます。
インプラント周囲炎は、天然歯の歯周病と同じで痛みが出にくいまま進みます
自覚症状で気づくのは、かなり進んでからになりがちなんですね。

日ごろの予防については予防歯科のページもあわせてどうぞ。

リスクが高くなる方もいます

正直にお伝えしておきますね。同資料では、次の2つがはっきり挙げられています。

① 喫煙
喫煙により粘膜の血流が悪くなり、傷の治りや骨の治癒に影響します。国内外の論文で喫煙者のほうが失敗率が高いと報告されており、禁煙はメインテナンス期間に入っても続ける必要があるとされています。手術のときだけの話ではないんですね。

② 糖尿病
手術後の傷の治りが悪くなり、感染の危険性が増します。さらに治療後にインプラント周囲炎を起こしやすくなります。
血糖値がコントロールされていない場合は、コントロールされるまで治療を延期する必要になります。

まずはお身体の状態をよくしてから治療に取り掛かることになります。
5年後の未来にどうなっていたいか?そのために今、あなた、私たちそれぞれが何ができるか?
これをしっかりと整理共有することで長い目で見て、「問題がない」状態を作ることができます。

10年後にどのくらい残っているのか

気になるところだと思うので、公的資料の数字をそのまま挙げておきます。

テーマパーク8020によれば、あるシステムのインプラント体を使用した場合の10年間の残存率は、部分的に歯を失った方で上顎が91%前後、下顎が96%前後。すべての歯を失った方では上顎が80%前後、下顎が97%前後とされています。

上顎の成績がやや低いのは、上顎洞や鼻腔があるため埋め込める骨の量が少なく、骨が軟らかいことが多いためだと言われています。

インプラントは完全無欠の治療法ではありません。
「わずか数%でもインプラント周囲円によって撤去しなければならない」現実を考えるための数字だと思っています。
できることの中心はやはりメインテナンスなんですね。

なお、インプラント治療そのものについてはインプラントってどんな治療?失った歯を補う選択肢のことで、入れ歯やブリッジとの比較は歯を失ったらどうする?インプラント・入れ歯・ブリッジの違いでまとめています。

一デンタルパークではどのようにしているか?

当院では、インプラントを入れている方の定期検診で、天然歯とは分けて見るようにしています。

同じ「被せ物」に見えても、見るべきポイントが違うからです。
歯ぐきの境目の状態、被せ物との境の清掃状態、そして噛み合わせ。
特に噛み合わせは、先ほどお話ししたとおりインプラントにはセンサーがないので、ご本人が「強く当たっている」と気づけないことがほとんどです。
だから、こちらが見つけにくい変化を探しにいきます。

それから、清掃の道具についてもお話しします。
「今までどおりの歯ブラシで大丈夫ですか」と聞かれることが多いのですが、部位や形によっては届きにくいところが出てきます。
当院では歯垢の染め出しを行って、見える化しています。

そしてもうひとつ。インプラントを入れていない歯のほうも、同じように見ます。
インプラント周囲炎の原因菌は歯周病菌ですから、お口の中のどこかに歯周病が残っていれば、そこが供給源になるわけです。
1本だけを見ていても守れないんですね。

川越でインプラントのメインテナンスをお考えの方へ

「他院で入れたインプラントだけど診てもらえますか」——もちろん大丈夫です。「最近、歯ぐきが腫れぼったい気がする」といったご相談だけでも構いません。

当院のインプラント診療についてはインプラントのページもご覧ください。

一デンタルパーク

せっかく入れたものを、長く使っていただきたいと思っています。


監修者プロフィール
武内 一広(たけうち かずひろ)/歯科医師・一デンタルパーク院長(埼玉県川越市)。むし歯・歯周病治療から予防歯科、小児歯科、口腔外科まで幅広く診療。治療した歯やインプラントを長く保つことを大切にしています。

出典

・インプラント|テーマパーク8020(公益社団法人 日本歯科医師会)
https://www.jda.or.jp/park/lose/index19.html

・メインテナンス|e-ヘルスネット(厚生労働省 健康日本21アクション支援システム)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-010.html

・喫煙と歯周病の関係|e-ヘルスネット(厚生労働省 健康日本21アクション支援システム)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-011.html

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状については歯科医院でご相談ください。